@ 神殿は角砂糖の上にあった。腐った大理石の階段には、熟れた柘榴がいくつも落ちて血のような染みをつくっていた。神殿には人影が無く、ただ首のない神像が一柱据えてあるだけだった。やがて空から土耳古産の茶色い雫が降り注いだ。角砂糖は溶け、神殿は珈琲の海に溶けて消えた。
貴方がこぼした珈琲が、読みかけの雑誌に染みをつくる。開いた頁が囁きかける。今週の双子座は幸運に恵まれると。いったい誰を責めればいいの。黄道を巡る星の動きを。西の空に輝くカストルとポルックスを。地球の周りを音もなく巡る衛星を。何を責めても手遅れだ。貴方は出て行く。